ヒューマンライブラリPart.4:DV被害経験のある社員へのインタビュー

<1、3、4の文責・榎澤幸広(名古屋学院大学現代社会学部准教授)、2の文責・元村里恵(株式会社アイエスエフネット 最高ダイバーイン雇用責任者)>

1.はじめに
ヒューマンライブラリ1日目登壇社員の属性は①シニア②LGBTQIA(性的指向)③HSPでしたが、今回から3回にわたり、2日目登壇社員へのインタビュー記事の連載になります。その中で最初に取り上げるのがDV被害経験のある社員です(これ以降の登壇社員は、⑤がフリーター経験者、⑥LGBTQIA(性自認))。

DVはdomestic violence(ドメスティック・バイオレンス)の略で使用されていますが、日本では殴る蹴るなどの身体的暴力以外にも、精神的暴力、経済的暴力や性的暴力などが該当するとされています。また、自分の子どもの前で夫が妻に暴力をふるうこと(逆のパターンも同様)は「面前DV」であり、児童虐待(心理的虐待)にもあてはまることになります(詳細は、男女共同参画局ホームページ「DV(ドメスティック・バイオレンス)と児童虐待 ―DVは子どもの心も壊すもの―」)。

この点、メディアも取り上げているのでご存知の方も多いかもしれませんが、コロナ禍や災害時において、DVや児童虐待が増加したという話もあります(二重の被害の問題)。

ところで、人は予想外の危険にさらされたとき、本来の状況よりもその状況を過小評価したり、異常事態を飲み込めず普段の状態と判断してしまうことがあるといわれます(心理学用語で「正常性バイアス」というようです)。

何人かのDV被害者やその友人から相談を受けた際、「あの人も優しいところがあったんだ」「仕事がうまくいっていないから私にきつくあたるけど、うまくいけば元に戻れるはず」という言葉を聞きました。この言葉が出る場合、DVの可能性が高いので、こちらは話を一通り聞いた後、万が一の事態に備えるためにも専門の弁護士さんや自治体にあるセンター(例えば、配偶者暴力相談支援センター)などを紹介するのですが、その中には「そこまでは必要ない」とか「聞いてもらいたかっただけだから、大丈夫」という返答をする人もいました。

学生コメントを読む限り、登壇してくださった被害経験のある社員も類似の状態だったのかもしれません。
ここで改めて気づかされるのは、話を聞いてくれる人も含め、サポートしてくれる周りの人たちの存在の重要性です。
登壇社員は友人との話の中で自分が渦中にいること(DV)に気づいたとのことですから、その重要な存在がいなければターニングポイントは訪れず、今回、うちのゼミ生に「今後類似の状況にある(orあった)社員をサポートしていきたい」と話してくれることもなかったかもしれません。
無論、重要な存在がいたからとて、このような過去経験を乗り越えるのはなかなか難しいのですが、ここまでいえるようになったのはアイエスエフネットに身を置いていることも一因としてあるかもしれません。

このことを確認してもらうためにも、2.において、アイエスエフネット側が社内での取り組みを記載してくださっております。また、登壇したDV被害経験のある社員本人の了解を得られる範囲内のプロフィールもここにて紹介されておりますので、3.の学生コメントを読む前に一読していただけたらと思います。

2.アイエスエフネットの取り組み&DV被害経験のある社員に関して
アイエスエフネットグループが掲げる人権方針に基づき、当社では「ダイバーイン(※1)雇用」に取り組んでいます。個人が抱えるさまざまな特性や個性によって就労困難な方に対し、環境や仕組みをつくり上げることで本人や周りの方々が働ける場を提供することが目標です。

配偶者暴力防止法が令和5年に改正され、一部の規定を除き令和6年4月1日から施行されます。主な変更点としては、DVに「自由、名誉、財産に関する脅迫」が追加されること、身体的DV被害だけではなく精神的DV被害も救済対象に拡大されること、保護命令制度の拡充と違反時の厳罰化が進められることなどが挙げられます。

DV被害を受けた方に対し、配偶者暴力相談支援センター等が就業支援を行っていますが、加害者との関わりを恐れ、結果として就業できる分野が限られてしまうことがあります。

当社では全ての社員が安心して働ける環境を整えるため、誰でも利用できる「お悩み相談窓口」や女性のための相談窓口「ウィメンズカウンシル」を設置しています。在宅勤務やフレックス勤務が行えることや、全国に拠点があるといった当社の強みを生かし、DV被害を受けた方にとっても働きやすい環境づくりを進めてまいります。

(※1)ダイバーシティとインクルージョンを掛け合わせたアイエスエフネット独自の言葉

【登壇者のご紹介】
氏名:
E.Mさん

自己紹介:
山や自然が大好きで、森林浴が趣味です。家では、観葉植物を育てており約10年間育てているモンステラが購入当初の約5倍以上の大きさになっています。
今では、グリーンショップ並みに部屋中が植物でいっぱいになっています。
友人知人から我が家のグリーンを譲って欲しいといわれ、プレゼントしています。(笑)

学生さんに向けたメッセージ:
インタビュー当日は心遣いや気遣いのあるお言葉をいただき、本当に心温かいお時間でした。本当に素晴らしい学生さんだと感動いたしました。
相手目線でお考えいただいたご質問は、こちらとしては大変答えやすいものでした。
心から感謝いたします。
DV被害者の方はさまざまな事情を抱えている方がいらっしゃいますし、被害や状態もさまざまです。
DVは、ある意味弱者に対する暴力の一つだと思いますので、誰に対しても改めて欲しいと願っています。
未来をつくる学生の皆さまもどのような被害者の方のサポートができるのかぜひとも一緒に考えていただき、過ごしやすい未来をつくっていけたら幸いです。

会社に向けたメッセージ:
当社で働けることを誇りに思います。また、感謝の気持ちでいっぱいです。
バックグラウンドに何かあっても過去を重視するのではなく、今や未来を大切に想い共に未来を観る視点が当社にあります。
今は苦しい状態であっても「未来に希望を描き、ワクワクする気持ちを持てる」それを実現できる会社だと思います。

この辛い経験があるからこそ、人の痛みが分かり、1人でも多くの方が安心して心地良く働ける社会にできるように、まずは社内環境づくりから尽力したいと思っております。

3.学生のコメント

ここでは8人の学生コメントを取り上げたいと思います。

  1. アイエスエフネットでは過去を見ないで未来を見る企業だと仰っていてこの言葉は、働いている社員、当事者にとっては、とても心強いだろうなと感じました。当事者としても過去を振り返りたくないことも多いと思います。思い出したくない過去もあってなかなか踏み出せず、能力や意欲がどれだけあったとしてもなかなか採用されないことも多いのが現状であると聞きました。そんな中、アイエスエフネットでは、この言葉のように、過去を見ずに未来を見るため、どんな方でも採用して、多様性を受け入れ、しっかりと寄り添いながら、当事者の方に活躍する場をつくるというのは、本当にとても素晴らしいことだと思いました。ありがとうございました。
    (小瀬 舜)
  2. 私は、DV被害経験者の方は人と関わりたくなくなり、仕事に復帰するのが多様な人々の中でも最も難しいのではないかと思っていたので、なぜアイエスエフネットに入社したのかが特に気になっていました。しかし、インタビューをしてダイバーイン雇用に取り組んでいるアイエスエフネットだからこそ入社をしたくなったことに気づきました。DV被害経験者の人が再びアイエスエフネットで働こうと思ったきっかけは、キャリアの多様性を受け入れていて安心感があるからと話されていました。アイエスエフネットは、ダイバーシティに取り組んでおり、平等に社員を大事に思っています。そのため当事者だからといって特別な支援がないので安心して働けると話されていました。これを聞いて私は、今まで自分自身が当事者の方を特別視していたのだと気づかされました。当事者だから何か支援してあげようとか優しくしてあげようとかが一番よくなく、普段通り接することが何より大事なことだと考えさせられました。
    (m.t)
  3. DV被害の方へのインタビューでは自分が思っているよりも過酷であることが知れました。仕事探しをする際に自分の得意な領域の接客業をすると、もしかしたら加害者である配偶者に遭遇してしまうかもしれないという心理的ハードルがあり、かなり困難であったとのことでした。アイエスエフネットでは特に特別な対応をされなかったからこそ平等に扱われているという安心感があったといわれていて、配慮しすぎないことも重要であると思いました。DV被害を受けているときに友人にいわれるまで気づけなかったというところがとても印象に残りました。自分は被害を受けたらすぐに逃げるべきだと思っていましたが実際はそのような感覚ではなく、気づけないくらい苦しいものだと感じました。今後、当事者の方と出会ったときには今回の話を思い出して自分にできることを考えていきたいです。
  4. DV被害の当事者であったE.M.さんは、アイエスエフネット入社当初、人と接する仕事に対して心理的な不安があったそうですが、アイエスエフネットの「過去は見ないで未来をつくっていく」という理念が支えとなり、その不安を乗り越えることができたと話されていました。アイエスエフネットの、その人の過去ではなく未来を見ていくというあり方が安心感につながり、仕事を続ける上での大きな支えになっているのだと思います。
    また、アイエスエフネットでは、配慮や気遣いができる人が多いため人間関係がよいことと、カテゴリーによる偏りすぎたサポートがないため、平等で安心ができることを話されていました。この点について、アイエスエフネットでは、人間関係がよいだけではなく、平等であるからこそ、お互いを尊重し信頼しあえる環境がつくれているのだと思います。
    (K.N)
  5. 私が当事者に話を聞いて印象に残ったことは3つあります。 1つ目は、DV被害に自身が気づいていなかったことです。友人に相談するまで自分で気づくことができなかったとおっしゃっていて自分で気づくことは困難であることを知りました。私はDV被害者の方が被害に気づかないことがあることを全く知らなかったので印象に残りました。 2つ目は、DV被害は精神的に大きな傷を負ってしまうことです。今回話を聞いていて2週間仕事をすることができなかったことなどメンタル部分の話を多く聞きました。また、アイエスエフネットに求める支援についてもメンタル的な支援がさらにあればいいとおっしゃっていたのでそれほど精神的に大きな傷を負ってしまうのだと思いました。 3つ目は、DV被害を受けている方のサポートを行いたいとおっしゃっていたことです。DV被害を受けてからこのようなことを考えられるようになるまで回復したことはすごいことだと思います。これは当事者の方の立ち直ろうとした努力の結果だと私は思いました。
  6. ご自身の被害を自ら開示はしていなくても、無意識に上司や同僚の方から悪意のある言葉をかけられるというような経験はないとはっきり申し上げられたE.M.さんの言葉から、アイエスエフネットで働かれている方々の温かい人間性が読み取れました。E.M.さんが当事者であるからこそ常にマイノリティの視点から考えることができるように、アイエスエフネットにはマイノリティの気持ちを多角的に考えることができる人が集まっているのだと感じました。
    また、特別視をされると引け目を感じてしまうというご意見と、入社してよかったと感じたところでお聞きした、アイエスエフネットが被害経験の開示をしてもしなくても平等に社員の方を大切にしているというお話から、過剰に気遣うことがかえって不平等を生んでしまうことに改めて気づかされました。
    被害を受けたことを開示していないため、当事者であったからこその仕事は任されていないが、さまざまな話を聞いてコミュニケーションをとることが多く、メンタル不調の方への相談窓口の仕事を担っていることが結果的に体験を生かせているとのことでした。そう気さくに話してくださったE.M.さんからは、優しく、前向きな人柄を感じました。
  7. DVの被害に遭ったE.M.さんは、仕事探しをする際に接客営業は避けなければなりませんでした。なぜなら、接客営業を行ったことで、過去DVを自分に行った相手に会うかもしれないという恐怖心があるからです。私はこの話を聞き、DVは相手の将来の選択を狭めてしまうほど最悪な行為であることを身に染みて感じました。また、E.M.さんは、自分がDVをされているとは気がつかなくて、友人から「それってDVじゃないの?」といわれ気がついたそうです。私は、DVされていることにすぐ気がつくものだと考えていましたが、実際そうではないことに驚きました。今までの人生の中で、DVを受けた方の話を聞いたことがなかったので非常に貴重な話を聞くことができ感謝の気持ちでいっぱいです。インタビューに答えていただきありがとうございました。
  8. DVに遭われた女性は接客業など得意な領域で働けなくなり心理的なハードルがあったとのことでした。しかし、アイエスエフネットは過去を見ず未来をつくるという考え方を採用し、社員を家族のように思い伸びしろや人間性を見てくれるということを聞き、働く人にとってとてもありがたいものだと考えました。DV被害に遭われた方にとってそのような考え方は過去のトラウマを思い出すことなく未来に目を向けることができ、多大なる安心感を与えてもらえるし、信頼関係を生むことなども可能となります。アイエスエフネットは安心して働ける環境や社員に優しくアットホームな環境が備わっているということを感じました。自分も就職活動をする際、アイエスエフネットのような考え方や温かく安心感を与えてくれるような企業で働きたいと強く思いました。

4.次回予告
次回は、フリーター経験のある社員です。今回と同様、インタビューした学生コメントなどを約2週間後の3月15日頃掲載予定ですので、引き続き閲覧していただけたらと思います!

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※この記事は、公開時点の情報をもとに作成しています。