ヒューマンライブラリ Part.2:LGBTQIA (性的指向)社員へのインタビュー

<1、3、4の文責・榎澤幸広(名古屋学院大学現代社会学部准教授)、2の文責・國吉陽介(株式会社アイエスエフネット ダイバーイン雇用委員会 委員長)>

1.はじめに
今回はこの連携を始める以前からゼミ生たちの多くが関心を持っていた「LGBTQIA (性的指向)」を属性とする社員へのインタビュー内容です。

【性的指向(sexual orientation)】とは、「どんな性を好きになるか」という意味ですので、本来は、同性愛者や異性愛者など地球上のかなりの人々に該当する言葉といえます。

しかし、このような言葉の定義はあまり浸透しておらず、テレビなどを通じ長らく、同性愛者に対しては、歪んだ恋愛観を持つ者とか行動をする者として位置づける番組が多くありました。例えば、<正常=異性愛と異常=同性愛>という二項対立の図式化なんかもその一例ですし、同性愛者を病気と位置づけるひどい事例もありました。

この点、近年は同性愛をテーマにしたり、同性愛カップルを主人公にするドラマも増えてきました。特に『きのう何食べた?』(西島秀俊と内野聖陽主演。2019年テレビ東京系列で放映)、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(赤楚衛二主演。2020年テレビ東京系列で放映)などのドラマが好評であったこともあり、ゲイやレズビアンといった性的マイノリティの人々に対する認識は以前に比べればよい方向に変わってきたかのように思われます。

それでも、後掲の学生コメントを見ていただければわかるように、性的マイノリティの人々が自らのアイデンティティなどを【カミングアウト】することは、この社会において居場所を失ったりリスクにさらされる可能性があることがわかるかと思います(海外では死刑という国もあります)。実際に、性的マイノリティの当事者がやっとの思いで友人や同僚に告げた自分のアイデンティティを彼らが他の人にばらすということも残念ながらありました。例えば、一橋大学の大学院生は自らの性的指向を同級生にSNS上でばらされたことで自殺に追い込まれてしまいました。本人の意思に反し他の人に性的指向などをばらす行為を【アウティング】といいます。このような本来起きてはならない悲しい事例をふまえ、一橋大学のある国立市は2018年、アウティング禁止条文も盛り込んだ『国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例』を制定しました<https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/soshiki/Dept01/Div01/Sec03/gyomu/0373/0377/8930.html>。

この点、学生たちのコメントを見る限り、アイエスエフネットはカミングアウトしても居場所を失わず、快適に過ごすことができるようです。このような空間づくりは、性的マイノリティだけではなく、家庭、学校や職場などさまざまな場面を過ごす人々やそこに関わるあらゆる人々がお互いに一日一日よい人生を送れるようにするための何かのヒントになるかもしれません。そのヒントに気づくためにも2章は、会社側によるアイエスエフネットの取り組み、そして、LGBTQIA (性的指向)社員本人による自己紹介という構成になっております。続く3章では、その社員にインタビューした学生コメントを掲載しましたので、こちらもあわせてお読みいただけたらと思います。

2.アイエスエフネットの取り組み&LGBTQIA (性的指向)社員に関して
アイエスエフネットグループが掲げる人権方針に基づき、当社では「ダイバーイン雇用(※1)」に取り組んでいます。個人が抱えるさまざまな特性や個性によって就労困難な方に対し、環境や仕組みを作り上げることで本人や周りの方々が働ける場を提供することが目標です。
アイエスエフネットグループの人権方針には「性的指向」と「性自認」の差別禁止が明記されてます。
私たちアイエスエフネットグループは多種多様な人がより良く働くために、規程や制度の改善を常に行っております。変更された制度を中心にご紹介します。

以下の考え方を基本として、制度変更をしております。

  • LGBTQIAなどのカップルを「婚姻に相当する関係」として認める
  • 婚姻に相当する関係における家族(親、子)を認める

■就業規則
就業規則における「婚姻状態」として下記のものを認めています。

  • 法律婚
  • 自治体及び民間団体が発行するパートナーシップ証明書の付与を受けたもの
  • パートナーシップ合意契約を締結したもの
  • 海外で同性婚をしたもの
  • 事実上の婚姻関係にあると会社が認めたもの

■育児・介護休業規程
休業を取得する際に対象となる子を「実子」から以下のように変更いたしました。
変更前:「実子」
変更後:3歳に満たない子と同居し養育している

■ワーキングネーム使用細則
結婚や離婚などによる氏名変更以外にも、「正当な理由によりワーキングネームを使用したい場合」においても使用できることを明記しました。

今後もダイバーイン雇用を推進するため、規定や制度の改善に取り組んでまいります。

【登壇者のご紹介】
氏名:
國吉さん

自己紹介:
沖縄生まれの名古屋在住です。
2012年入社後、技術職を経て現在はダイバーイン雇用委員会の委員長、およびエンジニア開発本部長を務めています。
趣味は手話、写真、食べ歩き、愛犬とのお散歩。
多様性を重んじる職場環境づくりとダイエットに尽力中です。

学生さんに向けたメッセージ:
名古屋学院大学の皆さん、貴重な意見と温かいコメントに心から感謝します。
私のカミングアウトとアイエスエフネットでの経験に関する皆さんの考えを伺い、大変感動しました。皆さんがLGBTQIAコミュニティに対する理解を深め、アライ(※2)としての重要性を認識し、自分自身の行動を省みる姿勢に、私は大きな勇気をもらいました。

皆さんの真摯な関心と、当事者の声を真剣に受け止める姿勢は、より豊かで包摂的な社会を作るために不可欠です。
これから社会人として歩む皆さんには、どのような環境でも自分らしさを大切にし、多様性を尊重する心を持ち続けることを願っています。
また、どんな困難にも立ち向かい、他者に対する理解の光となるよう努めてください。

私はアイエスエフネットでの仕事に誇りを持っており、これからも多様性の推進に努力します。
皆さんのこれからの活躍を楽しみにし、再びお会いできる日を心待ちにしています。
皆さんの将来が素晴らしいものになるよう応援しています。

会社に向けたメッセージ:
今日、社会には未だに偏見や誤解が存在し、LGBTQIAコミュニティは笑いものにされたり、差別を受けたりすることがあります。しかし、このような状況が私たちの決意を固くし、さらに力強く頑張る理由となっています。
私のカミングアウトを通じて、私たちの会社がLGBTQIAコミュニティへの理解を深めたことに感謝しています。皆さんのサポートは私に勇気を与え、偏見に立ち向かう力となりました。
私たちの会社は、多様性を尊重し、誰もが自分らしく働ける環境を提供することで、社会の理解と受容を深めています。この目標に向かって一緒に歩めることは、大きな誇りです。
今後も偏見に立ち向かい、多様性の推進に努めます。私たちの努力が、より理解ある社会を築くための一歩となることを信じています。
皆さんの努力と献身をこれからも支え、励ましていきます。
いつもありがとうございます、これからもよろしくお願いいたします。

(※1)ダイバーシティとインクルージョンを掛け合わせたアイエスエフネット独自の言葉
(※2)アライ(ally):「味方・同盟・支援者」を意味する単語で、アイエスエフネットグループでは「LGBTQIAだけでなくすべての方々を理解・支援する人」を含めて使っています。

▲わんこも一緒にHappy Pride!

3.学生のコメント
ここでは8人の学生コメントを取り上げたいと思います。

  1. ヒューマンライブラリの質問「働きにくいと感じたこと」に関しては、登壇者は働きづらさにあとから気づいたとお聞きしました。同僚との雑談、飲み会などで当たり前のように異性愛者だという認識で会話が進んでいくことが身近に感じるやりづらさだったそうです。異性愛者が当たり前という環境で、間接的に自分の性的指向を否定される気持ちは計りしれません。
    LGBTQIAの中でも性的指向は言わないとわからないので、配慮が欠けてしまうことも多いとはいえ、自分も無意識に誰かを傷つける行動をとっていたことに気づかされました。
    また、登壇者は性的指向がマイノリティに属することを自覚したのは教科書がきっかけということで、正しいことが書かれているはずの教科書から自分の性を否定されたといえます。現状の日本の教育で、何も悪くない人が苦しんでいることをたくさんの方にしっていただきたいです。
    さらに、マイノリティを理解しているつもりではなく、きちんと話を聞いた上での理解が重要だと感じました。
    (山口夢生)
  2. 私はインタビューを聞いて、アイエスエフネットはすごく働きやすい環境だと気づかされました。働こうと思ったきっかけがマイノリティの取り組みをしっかり行っていたことや、職場仲間がカミングアウトできるよい関係だったことなど、会社の内面がよく、社員が働きやすい環境に整備されていることが印象に残っています。また、カミングアウトするきっかけが部下に悩んでいることは言ってほしいからとのことでした。上司の方が悩みを打ち明けてくれる会社は、部下も悩みを打ち明けやすくなるのでとてもいい会社だと感じました。カミングアウト後に感謝されるようになったとおっしゃっていましたが、他にもマイノリティの方はたくさんいて今も悩まされているだろうこともいわれており考えさせられました。この悩みは、マイノリティの方だけでなく私たちもマイノリティを認めていくことで解決されていくと考えさせられました。そうすることでアイエスエフネットのような働きやすい環境の会社が増えていくと気づかされました。 (m.t)
  3. 性的指向の方へのインタビューでは、はじめに当事者ではあるが個人の意見であると言われました。当事者の中でも人によって感じ方が違うため、ひとつの意見が総意ではないということを理解しました。カミングアウトは元々リスクが大きすぎるためするつもりはなかったそうですが、するきっかけは自分自身を偽るストレスや社員に安心して入ってきてほしいというメッセージなどを発するべきと思ったからだそうです。これはとても勇気のある行動だと思いました。カミングアウト後の周囲の反応は上司の立場であるため軽くポジティブな反応でしたが、新入社員だともしかしたらいじめられていた可能性があると言われていました。当事者がカミングアウトをしてもポジティブな反応であるとは限らないというのが辛いものだと感じました。全員が差別や偏見をなくすためにも今日聞いた話を周囲に伝えていきたいと思いました。
  4. 國吉さんがアイエスエフネットに入社してよかったと感じることは、いい職場仲間に出会うことができたことだそうです。國吉さんは職場でカミングアウトをされていますが、LGBTQIAの方にとってカミングアウトをすることはリスクしかありません。カミングアウトができるほどいい職場であるということは、いい職場仲間と出会えたということだというお話がとても印象的でした。また國吉さんは、自分は上司という立場だったからカミングアウトができたかもしれないが、新入社員だったら違うのではと考え、誰もが「入社してよかった」と思える環境整備をしたいともおっしゃっていました。國吉さんの強い責任感と、社員に対する思いを感じ、人間としてとても優れた方なのだと思いました。
    國吉さんは学生に、アライになってほしいとおっしゃっていました。言葉通りの「支援者」的存在ではなく、当事者の方と一緒に伴走し、差別や偏見に対してきちんと反対ができるアライです。私も今回のお話を聞いて、当事者の方のパートナーのようなアライになれるよう、自分にできることを探していきたいと思いました。(T.H)
  5. 私が今回のヒューマンライブラリでとても印象に残ったことは多くの人は本人を異性愛者であることを前提として話をするということでした。恋愛に関する話題であれば男性は女性が好きであることを、女性であれば男性が好きであることを前提として話をする人が多いため、國吉さんもまた自身を異性愛者であると嘘をついてしまう。そうした嘘の積み重ねが人付き合いを苦しいものにしてしまうと私は知りました。同性愛者の方にとってそれをカミングアウトするということはとても勇気のいることであるため、何気ない会話の中で明かすことは難しいことだと思いました。そうした悩みを抱える方にとっては、悪意のない言葉であっても時に傷つけられてしまいます。しかし、そうした悩みを持つ方が自身でカミングアウトすることがなければ、他の人がそれに気づくことは難しいと思います。だからこそ、國吉さんのような方々が自身のそうした悩みをカミングアウトすることに対して不安を感じることのない、性的指向という一つの個性を尊重できる社会を目指していくべきだと感じました。(N.S)
  6. 今回、当事者の國吉さんからお話を聞くことができ、考えさせられることが多くありました。その中でも國吉さんが社内でカミングアウトするまでに至った理由からは、國吉さんのアイエスエフネットに対する信頼感をとても強く感じました。
    また、國吉さんは以前働いていた会社との違いについて、アイエスエフネットにおけるトップダウンについて挙げていました。國吉さんは、部下から発言しにくいイメージが今の日本社会には残っており、例え環境が整っていても意見を積極的に伝えることが難しい人は一定数いるため、トップダウンで上層部から社内全体に理念等を伝えていくことは、日本社会の現状にもあっているということをおっしゃっていました。
    このお話を聞いて、私自身トップダウンに対してはあまりよい印象を持っていませんでしたが、確かに現状に適している点があると思うと同時に、アイエスエフネットのように理念が明確であり、マイノリティへの理解が深く、ダイバーシティに向けた取り組みを積極的に行っている企業であれば、迅速に決定できるトップダウンは最適な意思決定のスタイルだと思いました。少し触れにくい話題ですが、國吉さんはアイエスエフネットを本当に信頼しているからこそ、今回お話してくださったのだと思います。(K.N)
  7. 國吉さんは入社の際墓場まで持っていくつもりだったけれど教育の責任者として偽っていることにストレスを感じ、会社にいて安心していいよというメッセージを伝えるためカミングアウトをしたとのことでした。その際、周りの反応はポジティブだったということを聞き、社内全体でダイバーシティ推進のために尽力している企業だということを感じました。アイエスネットは定期的な相談や雑談を含め、役職関係なく本音で話しあえる環境が整っているということを聞き、自分は働く上で一番大切だと思う人間関係が手厚くサポートされているので、働きやすい環境が備わっていると感じました。自分は就職に対してネガティブな印象を持っていたけれど、アイエスエフネットという企業を知り就職に対しての価値観を変えることができました。
  8. 私たち、名古屋学院大学現代社会学部3年の榎澤ゼミは、アイエスエフネットとよりよい会社、社会を作るために質問会を開催し、そこで性的指向が男性である男性社員の國吉さんに自身についての質問を行いました。
    國吉さんが入社したきっかけは、自身がゲイであったことと、アイエスエフネットが多様性に富んだ企業であることからだそうです。國吉さんが、会社に求めることや改善点はないと言っていたことからも國吉さんと会社の関係は良好ということがわかりました。このインタビューの中で私が印象に残ったことは、國吉さんが社内でカミングアウト後、ゲイの人の印象が悪くならないように責任ある行動をするようになったということです。カミングアウトは誰もができることではないとても勇気のあることで、それをポジティブな方向にもっていった國吉さんの精神は見習わなければなりません。さらに、カミングアウトをしてもこれまでと変わらずに接している仲間がいることがアイエスエフネットという企業の魅力であると認識しました。
    私は、これから社会人になっていく中で、すべての人がなじめる環境を作り、すべての人のアライ(味方)になれるように成長していきたいと思います。  
    ( 石川 太陽 )

4.次回予告
次回登壇者の属性は、HSPです。今回と同様、インタビューした学生コメントなどを約2週間後の2月15日頃掲載予定ですので、引き続き閲覧していただけたらと思います!

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※この記事は、公開時点の情報をもとに作成しています。